『綾瀬はるか「戦争」を聞く』を読みました
割とくたびれ切っていたこの連休最終日の朝、ポストにAmazonからの書籍らしき封筒が入っているのに気が付きました。
私、よく反射的に本を注文して、注文したことを忘れることがありますので(たまにうっかり2冊買う)、「また何か買ったっけ?」とか呑気に思いながら封を開けたらこの本が。
うわー!!!
これ、いつか読もうと思ってた本。
確かほしいものリストにはいれてたけど、あれ?何で?まさか!?
で、改めて封筒の表を見ると、お届け先にうちの住所と「わんおぺ」の文字が。
どうやら、ブログに貼っていた欲しいものリストから、どなたかが贈ってくださった模様です。
贈り主の名前は表示されておりませんでしたので分かりませんが、きっと読んでくださっているかと思うので、ここで御礼申し上げます。
この度は嬉しいギフトをいただき誠にありがとうございました。
(あと、今まで誰も送って来ないだろうと思って割と雑に色んなものをリストに入れてたことを反省します。ちょっと整理しました)
いただいたらレビューすることにしておりましたので、レビューさせていただきます。
レビュー&雑感
この本は、TBSテレビで放送された戦後六〇年特別企画「ヒロシマ」(2005年)およびNEWS23クロスのシリーズ「綾瀬はるか『戦争』を聞く」(2010〜2012年放送分)を書籍化したものだそうです。
私はテレビの放送は全く見たことがなかったので、今回初めて内容に触れることになりました。
いずれも、戦争の経験者(被爆者やその遺族など)に、女優の綾瀬はるかさんがお話を聞きに行くというものです。
中には、経験者が当時出会った人を探し出して再会した話や、ご遺族が家族の亡くなった場所を訪ねた話などもあります。
かなり力を入れて制作されたことが伺えます。
綾瀬はるかさんが広島のご出身ということで、広島の原爆の話があるだろうとは思っておりましたが、それだけに止まらないのですね。
広島、長崎、沖縄、ハワイ、東北と、目次が立てられています。
この項目立て、結構独特に見えませんか?
広島、長崎、沖縄は、戦争についての書籍や放送で、かなりよく見かけますよね。
一方で、ハワイ(真珠湾攻撃)について言及したものは、それほど多くはないように思います。
そして「東北」ってなんだと思います?
東日本大震災の津波・原発事故被害に遭われた被爆者の方にお話を聞いたというものです。
その章で語られたメインテーマは原爆の話で、津波や原発事故による避難に関してそれほど多くを語ってもらったわけではないように見えました。しかし、一瞬にして街や故郷を失うという点では、戦争被害を思わせるものでもあるので、戦争を知らない世代にも関連付けてイメージしてもらおうという意図があるのかもしれませんね。
何名もの戦争体験者の語りが出てくる中で、私がかなり印象的だったのは、「4 ハワイ」に登場する、真珠湾攻撃に参加して亡くなった兵士の婚約者、Nさんのお話でした。
その当時、宣戦布告に沸き立った日本国内で、婚約者が戦死したと知らずに提灯行列に加わったという話をされたNさん。今も婚約者のことを想って忘れられない様子です。
このNさんが、婚約者の戦没地を訪れるため、綾瀬さんとハワイ真珠湾に行くことになりました。
ところが、Nさんはハワイに着くと、アメリカ人を見て「憎たらしい」ともらしたり、アリゾナ記念館で当時真珠湾にいたという元米兵に「婚約者を撃ったのか」と詰め寄ってしまいます。
彼女にとっては70年経っても、アメリカは婚約者を殺した「敵」だったんですね。
これには同行した綾瀬さんも戸惑ってしまいます。
しかし、アリゾナ記念館の展示館で、彼女らは真珠湾攻撃による米軍の無残で痛々しい被害写真を見、今も真珠湾に沈む戦艦には900名もの水兵が眠っていることや、真珠湾攻撃で2000人以上米兵が亡くなったことを知ります。
すると、Nさんの発する言葉が「憎たらしい」から「悲しい」に変わっていくのです。
続く遺品の話や戦没地探しの話、婚約者親族の日系移民の話など、胸に響くものは色々とあるのですが、私はこのエピソードから、ちょっと愕然とする事実に思い至りました。
それは、戦争当時を生きた日本人が、必ずしもあの戦争を十分に振り返ることなく生きてきたのではないかということです。
「憎たらしい」が真っ先に出てくることからして、戦後70年の間にNさんは、日本による他国の加害について、全然実感を持っていなかったように見えます。
私、これまでそのくらいの年代の人なら戦争の加害についてもある程度ご存知だと思っていたのです。
何人もの方が戦地に行き、亡くなった方も多かったでしょうが、生きて帰った方も今の我々世代よりは身近だっただろうから、当然話に聞いたことくらいあるだろう、思いを馳せることはあっただろうと思っていたのです。
しかし、Nさん「日本人のほうが、かえってこんなこと知りませんよ」とも仰っています。
婚約者を失った怒りから見えていなかったということもあるのかもしれませんが、これって非常に危ういことではないかと思いました。
日本で戦争について描いた文学や映画などの作品というと、どうも「被害」に偏っているように見えます。
確かに、大規模な空襲がなされたり、核兵器による都市攻撃を受けた国であることから、そこに焦点があたりやすいことはもちろんですが、そもそもその戦争を日本が仕掛けたという視点は時に忘れられているのではないでしょうか。
私が小学生の頃、確か、担任の先生は平和教育として「戦争の被害と加害について調べてくるように」と課題を出されました。
この時、被害については絵本レベルから色々と題材があるので、簡単に色々なことを知ることができるのですが、加害となると子供向けの資料なんてほとんど無いので苦慮した覚えがあります。
知った内容にもかなりショッキングなものがありました。
また、現在に至っては、過去に多大な迷惑をかけた近隣諸国への加害の歴史をなかったことにするような歴史修正主義さえも跋扈している始末です。
戦争は自らや大切な家族を加害者にもし得ることを、決して忘れてはいけないと思います。
本書もまた、「被害」に多く焦点を当てたものではあるのですが、あえて「ハワイ」にも触れたあたり、加害についてもほんの少し思いを馳せるきっかけになるかもしれません。
それと、NEWS23プロデューサー吉岡弘行氏のあとがきもなかなか熱かったです。