「身の程に生きよ」と言われて
高校卒業の折に、お世話になった先生達から教室でメッセージをもらいました。
クラーク博士の"Boys, be anbitious"ではないですが、希望に溢れる言葉を色々と餞にくださるわけです。
そんな中、ある先生が−確か数学担当の声の小さい先生で風が吹いたら飛びそうな細身のご老人だったと思うのですが−教壇の前に立つなり言ったのです。
「身の程に生きよ」
と。
それだけ言い残して教室を出て行かれました。
教室はシーンと静まりかえり、こちらは内心大混乱です。
え、今の何?
生徒の方はこれから大学行って何をやろうとか、浪人してより上を目指そうとか、そういう算段してるところですよ。
「身の程」って何?「身の程知らず」の身の程だよね?
夢見るなってこと???
私、この一言のおかげで、他の先生方の言ったこと全部吹っ飛びました。
当時の私は、大学であれこれ(学問を)やってやろうと野心を抱いていた真っ最中。
いきなり冷水ぶっかけられた感じで若干の反発も覚えつつ、「身の程って何だ?」とこの言葉を引きずってしまいました。
でね、今に至って思うわけです。
自分の身の程はいまだによく分からないし、隙あらば野心的に色々挑戦してしまう落ち着きのないアラフォーなんですが、
あ、身の程知らずになってしまったあの人みたいになるなってことかな?
"ライブドア"ニュースに炎上の報が載ってしまう堀江氏。
これには意地悪くも笑ってしまいます。
堀江氏と言えば、なぜか東大中退をウリにして、会社を売ったり買ったりして(?)お金をたくさん儲けて、証券取引法違反(ライブドア事件)で有罪判決を受けて収監されたり、出所後も上から目線な本を出版したりしている彼です。
この方、東大(中退)という学歴から、どうも頭良いキャラで売ってるようなのですが、おっしゃっていることが正直頭良いとは思えません。
堀江氏がぶっ叩いているデモの参加者の主訴は、政府が実質年金受給額をじわじわ減らすマクロ経済スライドを採用しながらあたかも将来の年金が安泰であるかのようなアピールをし続けてきたことや、金融庁からは年金では足りないという報告が上がってきたのにそれを受け取らないという不誠実な対応をしたことや、そもそも富裕層に減税して低所得者層に増税する政策をとっていて庶民には2000万円も到底貯められないって嘆きが広がっていることや、そのくせ福祉に金を回さず外交に途轍もない金額をバラまきアメリカから不要な武器を購入していることを批判しているのであって、まさに税金泥棒はお前ら政権だろうということを言いたいであろうと思われるのに、
「そんな時間あったら働いて納税しろや。税金泥棒め」
ほんとそんな時間あったら働いて納税しろや。税金泥棒め。 https://t.co/oF9vK29be1
— 堀江貴文(Takafumi Horie) (@takapon_jp) June 18, 2019
ちっとも噛み合ってないです。
え、何なの?市民が夜間休日もぶっ通しで働いて国に納めろって言いたいの?
どんな奴隷を求めてるのよ。
あと、納税額より給付額が多いと税金泥棒という謎理論を唱えていますが、
お前相変わらず文脈とか行間読めねーんだな。親切に教えてやるよ。このデモに参加してる奴の大半は実質的に納税してる額より給付されてる額の方が多いんだよ。それを税金泥棒って言ってんだよ。 https://t.co/Qd3z1qVBSO
— 堀江貴文(Takafumi Horie) (@takapon_jp) June 19, 2019
そんなこと言ったら生業政治家の2世議員3世議員さん達なんて何世代にもわたって納税額より給付された額の方が多いから堀江理論で言う「税金泥棒」ですし…
↓
驚いたことにご自身の事業にはバッチリ税金が投入されてるそうです。
あと、ご自身の裁判にかかった裁判官や検察官の人件費や懲役中の生活なんかも当然税金で支えられているわけですが、そういうご指摘には耳を貸さないようで。
なんか、この人、すごく恥ずかしい。
東大入試に合格する頭の良さと、こうした当たり前のことに気が付ける頭の良さは、異なるものですね。堀江さんは前者を持ち、実際に大変お金を儲けて欲しいものを手に入れても、幸せじゃないのかな。 / “年金デモ参加者を「税金泥棒」と罵ったホリエモンこと堀江貴文氏、自…” https://t.co/x9GBVzzLmT
— わんおぺまむ@本当に寝ていたい (@OneopeMam) June 23, 2019
きっとこの方、試験に受かったり、マネーゲームで勝ったりする頭の良さは抜群なんだろうと思うのです。
(とは言え、入試はできても卒業はできてなかったり、マネーゲームの方はルール違反したわけなのでアレですが)
で、実際かなりのお金持ちにもなったでしょうし、有名にもなったでしょう。
よく分からないけど、そのどちらも堀江氏が欲しかったものなんじゃないかなとは思います。
なのに、なぜ、それを手に入れてもちっとも幸せそうに見えないのでしょう。
身の程…ああ、そういうことなのかな。
自分に見合った幸せではなく、世間から分かりやすい量的な一番を目指してしまったのが、この人の不幸なのかもしれない。
まるで、本当は喉が渇いているのに、必死にステーキを何枚も何枚も食べて、お腹パンパンにしながら「まだ足りない」って言ってるみたい。
ネコ師匠のバトンを受け取って堀江氏の過去の女性蔑視的な言葉を批判しに行こうかなとか思ったけど、なんだか堀江氏の矮小さがあまりにも際立ってしまい、なんか哀れになってしまって、改めてブログで罵る気が萎えてしまいました。
この方がどうしてデモをする市民を叩こうとするか、彼の内心の出来事なんて分かりませんが、ひょっとしたら、
・お金持ちでもなければ、高学歴なわけでもない、無名の市民が自分の頭で問題の所在を突き止め、解決のために市民の力でできる最も効果的な方法を使って行動した。
ってことを羨ましがってたりしませんか?
堀江さんが大枚はたいて買った10枚目のステーキを無理やり口にねじ込みながら「まだ喉の渇きが癒えない」って言っている横で、見ず知らずの何も持ってなさそうな人が水道の蛇口をキュッとひねって手で水をすくって飲んだのを見て「おい!タダで喉の渇きを癒すなんてズルいぞ!」って…。
いや、どなたでも水道水飲んだら宜しいやないですか。
まだ日本の水は安うで飲めまっせ*1。
世の中の色んな問題(健康的な食事を食べたい、夏の暑さや冬の寒さから身を守れる家に住みたい、家族と団欒できる時間の余裕を持って働きたい、等々)って、結局お金があれば解決できるのにな〜と思うことは多々ありますが、
そういうささやかな希望を叶えるのに十分すぎるほどのお金をお持ちの方が幸せとは限らないんだなということを、 目の当たりにして、
あ、2億円欲しいとかやっぱりもういいかな?健康で程よく働き続けられればそれでいいかな?って思ったので、ようやく先生の言葉の意味が掴めてきたような気がします。
堀江さんありがとう。
もっとも、ひょっとすると堀江氏の一連の狂ったようなデモ叩き発言(まとめ)の理由は、別にあるのかもしれませんが。
堀江「津田(大介)さんはツイッターでどれくらい稼いでいますか?」
— ほうとうひろし (@HiroshiHootoo) June 19, 2019
津田「僕ね、思ってる以上に別にツイッターで儲かってないのよ」
ひろゆき「むしろツイッターで稼いでいるのはこの人(堀江氏を差す)。特定のキーワードでツイートするとお金もらえるスポンサー持ってる」
堀江、額の冷汗を拭う pic.twitter.com/eClvwHiruy
もしこっちが理由だった場合には、改めて全力で批判しに行きます。
*1:水道法改悪されちゃったので、水道事業が企業に売られた後はもはや安くないかもしれませんが