"Kimono"が補正下着に取って代わられる悲しみの中で
キム・カーダシアンというアメリカのセレブが、自身のプロデュースする補正下着ブランドに「Kimono」の名を付け、それを商標登録しようとしているそうです。
すでにKimono.comというURLも取られてしまっているのだそう。
そうするとどうなるかって、日本の着物メーカーがアメリカで本格着物を販売しようと“Kimono Store”みたいな店名付けようものならキム・カーダシアンから訴えられるというとんでもないことが起こるわけです。
私、イチ着物好きとしてこれには黙っていられなかった。
彼女のツイートに英語で批判リプを付け、署名もしました。
↓賛同される方はぜひ↓
私自身、着物好きでありながらも、今の着物業界には色々と憤ったり批判することも少なくはありませんが、さすがにアメリカのセレブにその名前まで乗っ取られては黙っていられません。
【文化の盗用】
私も最近知った言葉ですが、大国やマジョリティに属する人が、小国や少数民族、マイノリティの文化を勝手に利用するようなことを示すようです。
着物がらみで言えば、昨年あたりだったか、日本の着物メーカーがアイヌ意匠を使った浴衣を売り出そうとして炎上したケースがありました。
アイヌは日本の少数民族。歴史的には日本人マジョリティである大和民族に迫害され、土地を奪われたりしてきた経緯もあります。
そのアイヌの意匠が彼らにとっての侵略者である大和民族の衣装に勝手に使われるという構図は、あまり良い印象はありません。ネイティブアメリカンの装飾を白人アメリカ人が作って売り出すようなものです。実際にアイヌのTwitterからも批判がされていたように記憶しています。
幸いメーカーさんが当該浴衣の販売を中止し、元の意匠作成者にお詫びに行き、先方からも励ましの言葉をいただいたとかの話を拝見したので、なんとか拗れずに済んだのだろうと思いますが。
どうかフェアな文化交流がなされていると良いなと思っています。
私は、恥ずかしながら文化の盗用という概念を、この事例を通じて初めて知りました。
実際にアイヌの方がTwitterで憤ったりしているのを見て、たしかにこれは良くないなと思いました。
このときにもし「別に良くない?」なんて呟いていたら、さすがに今回のKimonoだけ都合良く憤ったりはできなかっただろうなと思います。
あるいは、5000文字×2本くらい猛反省のブログを綴った上でキム・カーダシアンに抗議するか。
いや、あのとき実際批判側に立ちはしたけど、もっと強く諌めた方が良かったかもしれない。
自らの文化と他の文化を、共に尊重する。そういうスタンスでありたいなと思っています。
【着物のファンは…】
インスタグラムの #Kimono のトップアイコンには早くも補正下着の画像らしきものが載り、げんなりしていたのですが、日本や世界の着物ファンは同タグに素敵な着姿を投稿し始めました。
どなたも素敵なんですが、私のイチオシの着物インスタグラマーさんを紹介いたします。
インスタの貼り方が分からない…。
これは「引用」の範囲であろうとは思うのですが、もし問題があるなら削除いたしますのでお知らせください。
このSheilaさん、コーディネートのセンスが抜群で、大好きなんです。
ちょっと派手目な柄も、舌を巻くような組み合わせの妙で着こなしてしまうのです。
いつか華やか柄を彼女のように着てみたいものです。
【文化の交流?リスペクト?】
今回の補正下着にKimonoは言語道断としても、異文化のエッセンスを取り入れたデザインとかは、結構よくありますよね。むしろ着物の柄ってそういうの多いです。もしかしたら無配慮なデザインの借用・盗用が知らないうちに起きているかもしれないと思うと、ちょっと怖くなりますね。
何が許されて何が許されないか、その線引きはすごく難しいだろうなというのはアイヌ浴衣のときに思いました。
取り入れてる方も、奪ってやろうという明確な意図なんてないんですよね、たぶん。でも、やられた方はきっと許しがたい。
その辺は、その国や民族の歴史的経緯とか、意匠に込められた意味とか、色々絡んでくると思うんですよ。
さきほどのアイヌ浴衣でいえば、やはりアイヌと和人との歴史的経緯が深刻であることを特に和人側がきっちり理解していなければいけないと思いますし、意匠の意味も分からず適当に「カッコイイから」って使ったら、本来の文化ではいけないことだったりするかもしれませんよね。
意匠のミスマッチについては、例えばですが、「黒かったし、柄が天使の羽を連想させるから」って羽を広げた鶴の柄の黒留袖を葬儀に着てくる人がいたら日本人的には「え!?」ってなりますよね。それ結婚式で新郎新婦の親族が着るやつ…って。
もうちょっと分かりやすい例だと変な英語or日本語Tシャツとかもある意味そうなのかも。
他方で、外国の方に着物を着て楽しんでいただくのは、私としては大歓迎。
最近の真夏は別として、湿度の高い日本の気候に適した衣服だと思うし、大胆な意匠や色柄の面白さ、素材の多様さをどんどん楽しんで欲しいです。
こんな風に、文化をMIXするのも良いなと思います。
https://www.buzzfeed.com/jp/saoriibuki/aufa-tokyo
この方の場合は、ヒジャブも着物もご自身の文化ですよね。だからこそ出来ることなのかも。ムスリムでない私が着物にヒジャブだったら、それは違うのかも。
もし海外のデザイナーが、日本の着物ファンも欲しくなるようなハイセンスな本格着物作ってKimono名の入ったブランド立ち上げたら、うーん、白旗上げるかなあ。
そこまでやってくれたら「これは盗用じゃない、リスペクトだ」という気がしそう。Kimono.comだったら流石にちょっといただけないけど。
色々と難しいなと思うけど、自分が嫌なことは人にすべきじゃないし、自分が大したことないと思うことでも人が耐えられないほど嫌だと言うならちゃんと配慮しようと思います。
楽しくフェアな異文化交流をしたいです。
というわけで、
賛同いただける方は、ぜひ署名お願いします。
↓
2019.7.7追記
どうやらKIMONOの商標は使わないことにしたらしいと報じられたのですが…こういう炎上商法だったのではという見解もあるようで、まあ何ともですね。