近所の老犬
別に落ちも何もない話ですが、個人的に心動いたので。
近所の戸建に犬を飼っているお宅がありまして。
結構なお年に見える、たぶん芝犬。
ここいらは東京下町の狭い家が立ち並ぶところで、戸建だって庭もないようなところがほとんど。
玄関脇のちょこっと空いたところに犬小屋があって、そこに毛布が敷いてあって、老犬はいつもそこに丸くなって静かに寝ていたり通行人を眺めていたりしました。
一度も吠えるところを見たことがないほど大人しい犬でした。
それが夏の終わり頃だったか、ふと「最近、ここの犬を見ないな」と思ったのです。
犬小屋はあるけど、中にいない。
今日はお散歩だろうか、家の中だろうかと思っていたけど、会わない日が随分続きました。
毛並みもだいぶ白みがかっていて、ほとんど動かないような犬だったので、ちょっと心配になります。
そして、いよいよ冬になってきた頃、玄関脇から犬小屋がなくなりました。
ああ、そうなのか。
もうお年だったからなあ…。
そのように寂しく思っていましたところ、昨日ね、そこの家の前を通りがかったら、
玄関を開けた飼い主さんと、老犬が出てきました。
なんだ!お家の中にいたのね!
これから老犬は暖かそうなお家の中を終の住処とするようです。
犬小屋がなくなったのは、もう室内飼いに変えられたということだったのですね。いなくなったわけじゃなかったの。よかった。
どうか幸せに長生きしてね。