泣いとけ赤鬼
子が小2です。
小学生の宿題といえば、「音読」がありますね。
同じ作品を何度も読むことになるので、毎回通しで読むのは読み手も聞き手もかなり辛い。
そこで我が家では1日に1ページずつ読むようにしています。
母「続きが気になる〜!」 子「ふふふ、この後どうなるでしょう」
これまで割と知らない作品が続いていたのですが、今回はメジャー作品が出て来ました。
『泣いた赤鬼』
あらすじ:どうしても人間と仲良くなりたい赤鬼。そこへ青鬼が「自分が人間の前で暴れ、赤鬼がそれを追い払う」という計画を持ちかけ、二人はそれを実行する。赤鬼はそれによって人間と仲良くなったが、青鬼は人間の疑念が赤鬼に向くことを懸念して遠くへ去ってしまう。それを知った赤鬼は、青鬼のことを思って泣く。
うん?
あれ、この話、なんか酷くない???
改めて見ると、赤鬼も青鬼も、まとめて酷いじゃない?
まず、赤鬼の評価について。
作品では、鬼とは大きくて角がある生き物であることが描かれています。
だけど、怖くない、優しい鬼だと続くのですが、「優しい」の具体的エピソード、
「人間をいじめたことがない」ときます。
いやいや、そんなものは「当然の前提」でしょう。
大きくて力のある存在と、小さくて弱い存在がいるとき、「いじめない」というのは共存の最低限の前提じゃないですか。
例えば、ネコと仲良くなりたいヒトは結構多いかと思います。
ヒトは、ネコより大きくて力も強いです。
さて、「ネコをいじめたことがない」は、「優しい」と評価するに足るのでしょうか。
むしろそれは、ヒトとして当然の話じゃないでしょうか。
さらに、物語の中心となる、人間と仲良くなる計画について。
同作では、2人の鬼たちが、青鬼が人間の前で暴れ赤鬼が止めることで、人間に赤鬼が優しい鬼だと思わせる計画を立てています。
もうね、この計画に乗った時点で「赤鬼=優しい」が崩れますよ。
こんなの漫画に出てくる小悪党並みじゃないの。
悪そうなオニイサンたちに女の子を襲わせ、そこへ俺が助けに入る。女の子は俺に惚れるに違いない。
みたいなね?
ダメだ、もう完全にそんな感じにしか見えない!
あのね、ネコと仲良くなりたいヒトが、女の子と仲良くなりたい男が、他者によって相手を脅かす計画を立てるとか。その話に乗っかるとか。
想像してみましょうよ。もうその時点で、そいつは全く優しくないでしょう。
ああもう、こんな物語があるから「俺は女の子に優しいよ」(=殴ったことはないから)みたいなアホがわらわら出てくるのでは?
根っからのネコ好きとして言わせてもらいましょう。
あのね、本当にネコと仲良くなりたいヒトは、無理やり近づいてはダメですよ。
ネコにはネコの生き方があるのです。
ネコに驚かれない距離で目で見て愛でる。
もし困っていたら助ける。
ネコが嫌がったら遠ざかる。
それがネコと接する基本じゃないですか。
そのヒトが「優しい」かどうかはネコの方が決めることであって、ヒトが決める話ではないはずです。
そんな体たらくで、赤鬼は青鬼を思って泣くというのがこの作品のラストですが……。
いやもうお前ら、二人して結局鬼のことばっかり考えてるじゃん。
人間と仲良くしたいって、結局その程度の話だし。
全然それで構わないけど、それなら人間に手を出さずに鬼二人で仲良く暮らせば良かったじゃん。
結局、赤鬼も青鬼も、自分勝手で独善的、本当に「優しく」はないと、私には思えます。
どういう意図で子どもに読ませているのかは知らないけど、 このストーリーで「青鬼が優しい」だとか、「赤鬼と青鬼の友情が〜」みたいなやつは、ちょっと物凄く不気味だわ。