アフターピルは誰のためのものか
アフターピルとは、避妊の失敗や性暴力による望まぬ妊娠を防ぐために事後に飲む「緊急避妊薬」のこと。
性暴力や避妊の失敗で望まぬ妊娠の可能性がある場合、性交から72時間以内に緊急避妊薬を服用すると、高い確率で妊娠を避けることができるのだそう。
現在これを薬局で処方箋なしに販売することを検討しているのだそうです。
うんうん、なるほど。
ところが、これに異を唱えたのが、「日本産婦人科医会」。
ん?なんで???
詳しくは記事の方を読んでいただきたいけれど、いくつか気になる点があります。
ちょーっとツッコミ入れさせてくださる?
「緊急避妊薬はホルモン剤でいつでもいいから飲めば避妊ができると思ったら大間違いで、限られた時期に72時間以内に飲む。ホルモン的な理解が基本的にない方が次々に、いつでもいいからそこ(薬局)に行って買えばいいんだということは違う」と女性の知識不足を反対の理由に挙げた。
うん、限られた時期に72時間以内に飲むのが正しいのだと。それはいい。
で、「ホルモン的な理解が基本的にない方が次々に、いつでもいいからそこ(薬局)に行って買えばいいんだということは違う」だって???
ちょっと待って、薬局でも服薬指導だっけ?薬剤師が話聞いたり副作用の説明したりするやつ、あれあるじゃん。あれはどうした。
医療従事者以外の一般の女性が皆ホルモンの仕組みを理解しているわけではないだろうが(一般男性だって多分一般女性と同等以上に理解していないだろう)、そこは薬剤師がちゃんと指導すれば済む話でしょう。
これ、全然反対の理由にならないじゃん。こういうこと言うなら花粉症薬だってヒスタミン的な理解が基本的にない方が次々に薬局行って買ってるけど薬剤師がちゃんと説明して売ってるでしょう。私は市販薬あんまり買わないからよく知らないけどさ。
そして、「本来、いつ(妊娠の)チャンスがあったかということを踏まえた上で、こちらが指導しながら飲んでもらうのが大原則であり、本来1錠だけでいいのに何錠も買うことがあり得てしまう」とリスクがあるとした。
え…、1錠だけ売ればいいじゃん。
何?市販薬って12錠1シート単位でしか売れない法律とかある?
もしそうだったらそっちを変えよう、それは超不合理だから。
それでも薬の濫用(って避妊薬濫用するメリットある?なかろうと思うけど)のリスクは、絶対にゼロとは言わないよ?何らかの理由で複数薬局回って2錠以上手に入れる人がいないとは限らない。
けど、そこまで面倒なことして濫用する動機のある人がいるとしたら、その人は産婦人科での処方の場合だってやるでしょ。
妊娠検査薬やエコーじゃ分からないくらいの時期に服用する薬なんだから、産婦人科で処方するときだって妊娠確認して出してるわけじゃないもの。リスクあるとしても現状とほぼ変わらなくない?
また、「今日の性教育が、中学生ではいわゆる性交や避妊という言葉すら使ってはいけない現状を考えると、私たちはただどんな時でも薬局で買えるということ自体がそもそもおかしい話なのではないか」と性教育の不備にも言及。
おう、今の性教育が不十分なのは間違いない。
だからこそ、望まぬ妊娠の危険って大きくない?
不十分な性教育のせいで、望まぬ妊娠の危険にさらされる女性が増える。
↓
じゃあ、せめて望まぬ妊娠を防ぐ手段を充足させよう。
ってならないの?何で???
「では、我々のところになぜ来ないのかよくわからないのですが、医者のところ、産婦人科で基本的には手に入るわけです。これからオンライン診療で他の診療科に行っても、産婦人科に来なくても希望すれば処方箋があれば出してもらう仕組みができることから、薬局で自由に買えるわけには行きませんが、以前に比べたらチャンスは増えた」と購入のチャンスが広がったことを強調した。
オンライン診療……って、どこがやってるの?他の診療科って?どういうこと???
私そんな仕組み知らんかったし、多分うちの近所の爺さんがやってる内科小児科で聞いても「ハァ?」って言われるんじゃなかろうか(なお、そこは赤ん坊の予防接種も心許なくて、看護師さんがこっそり別の小児科紹介してくれたというところだ。具合悪くなると判断力が低下して他のところ探せないので結局そこに通ってるけど)。
あのねえ、産婦人科のハードル、決して低くはないですよ。
特に若い人たちだと、場合によっちゃ行くこと自体に抵抗あるかもしれない。
私は18か19くらいの頃、生理痛がやばすぎて産婦人科巡りをしてしまったんだけど、産婦人科に行くこと自体には抵抗がなくても結構大変でしたよ。
・女性医師は必ずしも多くない
・行ってみるまでお産専門のところと婦人科一般のところがあるのを知らなかった
(「なんで来たの?」って反応で戸惑った。どっちも「産婦人科」って書いてあるのに)
・予約なしだと結構待たされるところもある
今はその頃いくつか巡って見つけた信頼できる産婦人科があるので良いけれど、引越ししたりして新たに探すとなると正直気が重いです。
中には嫌な感じのところもあるからさあ…。
「我々のところになぜ来ないのか」って言われても、こんな感じの高齢男性医師がいる産婦人科には正直あんまり行きたくないよ?
その辺の心理的なハードルの高さはともかく、待ち時間が長いところは、飲むべき時間が限られている薬なら割とシビアな気がするけどなあ…金曜の夜に事があって、土日に病院休みで、月曜朝に学校や仕事休んで受診してるみたいなケースを考えると、アフターピルにはいろんな方法でできるだけ迅速にアクセスできた方が良いのでは。
ここまでツッコミ入れていきましたが、一応ですね、記事冒頭にあった
この案について、「全ての女性の意見を代表しているわけではない」
というところは、間違いではないと思います。
一部、女性の方でも薬局販売解禁に反対意見の人がいるのは、私もTwitterで見かけました。
反対意見の方は、緊急避妊薬に容易にアクセスできるとなると、逆にコンドーム等での避妊をしない男性が出てくるのではないか、という懸念を示されていたように記憶しています。
私は、そこについてはちょっと疑問で、確かにそういうロクデナシが増えると困るけれど、その手のロクデナシは多分現状でもロクでもない行為に出ているし、 それよりは現状で困っているような女性が助かる手段が増える方がいいような気がしています。
アフターピルは誰のためのものかといえば、やはり望まぬ妊娠を避けたい女性のためのものでしょう。
望んでの妊娠は喜ばしいけれど、望んでいてさえ妊娠は非常に大変なことですし、命に関わることもあるし、その後のキャリアや人生計画がガラッと変わってしまうこともある。
そんな大事を、望んでもないのに、時には犯罪被害にあった側が、強いられるような事があってはならないですよ。
もちろん、反対意見の女性たちの言うことも分からないでもないから、そこはじっくり話し合う必要はあるんだろうなという気もする。
既に薬局で買える国における実態調査なんかもして、メリット・デメリットを検討したらいいんじゃないかな。
当事者である女性の中でも色……ん?………ん???
さすがにこれは無いわ。女性が身を守るための緊急避妊薬の話に当事者である女性が全く不在というのは、流石にあり得ない。何でこんなことになってるの?#緊急避妊薬を薬局で https://t.co/cyxibvId6S
— 佐藤倫子 (@sato__michiko) 2020年10月22日
日本産婦人科医会の会見、確かに男性だけですね。 pic.twitter.com/ehgSd4OQ8J
— 岩永直子 Naoko Iwanaga (@nonbeepanda) 2020年10月22日
おっさん一色*1