アニメ『どろろ』が良い
なんだかお久しぶりのブログです。わんおぺまむ、なんとか生きてます。
世の中ムッチャクチャなのにアニメの話?
いえいえ、世の中ムッチャクチャなのでアニメを見ているのです。
・ストレスで精神がヤバいので漫画サイトに入りびたる
↓
・『魔王城でおやすみ』にはまって5周くらい読む
↓
・同作のアニメがあると知ってアマプラを見始める
↓
・並んだアニメタイトルの中に『どろろ』を見つける
要は完全に現実逃避してあまり神経使わないギャグ漫画とアニメ見てたんですが、
ふとタイトル見て気になっちゃったんですよね。
「あれ?これって手塚治虫だっけ」
(以下、うっすらネタバレ含み)
あまりストーリーの記憶はなかったのですが、もしかしたらどこかで一度読んだのかもしれません。
アニメの方を見初めて(確かあの子は女の子じゃなかったっけ?)とか、断片的に思い出すところがあったりしたので。
後で改めて原作の方も読んでみましたが、ストーリーの大筋は原作に添いつつも、かなり大きな部分で色々と改変があります。
が、この改変の仕方が、物凄く良いのです!
あらすじそのものは原作同様、父である醍醐景光が我が子の体を対価として鬼神と取引をしたために、目も耳も手足もと身体のあちこちを奪われ捨てられた赤ん坊(百鬼丸)が、寿海という医師により作り物の身体を得、鬼神を退治して奪われた自分の体を取り戻していくというものです。
百鬼丸が「どろろ」という名の子どもと出会って一緒に鬼神退治の旅をしていくのですが…。
原作漫画だと、百鬼丸はどろろと簡単にコミュニケーションが取れています。
目も耳もないのだけれど、テレパシーのような能力があるということになっているのです。
アニメでは、当初の百鬼丸は生き物と妖の気配は炎のように感じ取れますが、視覚、聴覚はなく言葉も発することができません。それどころか顔自体も完全に作り物で、表情がありません。
本人の意思があるのかないのかすら分からないような状態の百鬼丸を、どろろは当初儲けのネタに使おうとして付き纏い始めます。そうしたどろろの強かさは原作同様かな?
スタート時点では人形のような百鬼丸が、話が進むにつれ、体や感覚を取り戻していき、だんだん人間らしさが出てくるのが良い…のですが…これが良いことばかりではないんですよね。
取り戻すたびに見舞われる悲劇や苦痛は、産みの苦しみや、この世という地獄に生まれてくることの苦しみを思わせます。
・父の動機がちょっと違う
我が子である百鬼丸を鬼に食わせた父醍醐景光。その動機が原作では「天下を取りたい」と、何やら強欲な感じに見えます。
一方、アニメの方は、戦乱と飢饉に見舞われた領地を救うためには鬼神の力を借りるしかないと、悲壮な決意をしています。
やっていることは残酷なのですが、そこには彼なりの正義と覚悟があり、それを支持する者もいます。
この動機の部分が違うために、作品全体が「国家のために個人を犠牲にすることは是か否か」という、なんとも大変なテーマを投げかけてきます。
はっきり否と言いたい…のに、言い切れない現実も突きつけられる。
実際問題、そういうことはありますよね。
例えば予防接種は一部の人に副作用で生命や身体に重篤な影響を与えます。しかし、それでも予防接種を義務付けることで、そうした副作用に見舞われなかったその他大勢は怖い病気から守られることになるわけです。
予防接種を義務化する国家権力は、ごく一部とはいえそうした犠牲があることを承知の上で義務化するわけですが、これは是か否かと言われたら…?
なんてことを考え出すと、自分自身も誰かしらの犠牲の上に立っているということを自覚せざるを得なくなります。
・百鬼丸の弟「多宝丸」
この人は、多分一番著しく改変されたんじゃないでしょうか。
アニメでは、ストーリー上、かなり重要な役回りを果たすことになります。
悪い子じゃないんだ…決して…。
あのね、もうね、ストーリーも見応えあるんですがそれよりも、百鬼丸の仕草や表情の変化とかがもう、いちいち愛おしくてたまりません。
特に、聴覚を取り戻した後の回(「みお」の話)はその辺りの描写が神がかってます。
音の洪水に慣れずに苦しむ様子、どろろの話し声がうるさくて耳を塞ぐ時の表情、その後出会った少女「みお」の歌声を聞きたがる所作とがもう…もうね。
仄かな恋心もあるのかな、あったんだろうな。
どろろの方は、生い立ちのストーリーや、幼いながら一人で生き抜いてきた強かさなどは大体原作通りかなと思いますが、アニメの方がなんだかちょっと素直で良い子な気がします。なんというか、「根は良い子」という感じで。
旅先で出会う人の言葉に素直に耳を傾けていたり、かなり真剣に百鬼丸に心を砕いているんですよね。とても健気。
この子がいることで、重いストーリーに負けない未来の展望が見えます。
ああ、そういえば、どろろと百鬼丸の関係性が、逆転とまでは言わないけれど、かなり違いますね。
「強いけれど人間的には赤子状態の百鬼丸<実質人生の先輩どろろ」
という感じで。
全体的にシリアスなトーンのお話になっていますが、こうしたアレンジ具合が本当に絶妙で素晴らしかったです。
で、私は今、百鬼丸の表情の変化を追う2周目の旅をしております。
当分はこれで生きていけそうです。ではでは。